2012年 10月 30日
満月 |
スサンネ・ビア『未来を生きる君たちへ』
暴力の連鎖、負の連鎖を止めることは非常に困難であり、暴力には暴力で対抗すべきなのか、または非暴力で対抗するべきなのか、理性や建前では簡単に片付く事のない問いを観る者に投げかける映画。
暴力で支配されている世界に身を置いている場合、更に大きな暴力を呈することでしか自分の身を守ることはできない。人間が根源的に抱えている恐怖心が暴力を生み出す。(こういった暴力渦巻く原始的な世界から人間的に生きるために宗教が生まれた。?)
この映画は、登場人物がそれぞれが抱えている問題が、爆発事件が起こる事で人間関係が新しい段階に進展したりマイナス面が反転したりする。
こういうことは私たちの生活の中にもまま見受けられる。
一度大きな事件が起きて問題が公になれば膿を出すのは簡単だ。
各々が抱えている問題を表に出さず、小さな不満を抱えたまま表面上は平常運転しているのが一番危ない。大抵の場合、それは最悪の結末を迎えることとなる。
ヒューマニズムとは一体なんなのかとこの映画を見て思った。
浮気をする男の人は酷い人だと決めつけることは簡単だ。しかし違う側面から見たら、あの人は優しくて、自制心が弱いから色んな女性に頼られてつい浮気をしてしまった。と見ることもできる。
北野武のアウトレイジでは切れないカッターで指を切ったり、菜箸を耳に突き刺したり、その辺にある生活用品で肉体を傷つけるような痛い描写が繰り返される。それは逆に暴力の抑止力になると感じた。
未来を生きる君たちへは、暴力の裏側に何があるのかを見ている者に考えさせる。そこに至る経緯に一体何があったのかを考えさせる。表面上に見えているものと、その奥底で渦巻いているものを想像することだ。
ニューマニズムとは一体何か。人間の情けない、惨めな部分を肯定することが、ヒューマニティーではないか。
・ジャン=リュック・ナンシー『フクシマの後で:破局・技術・民主主義』11/9発売。読む。
by me1t
| 2012-10-30 13:52
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